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認知症なの


認知症なの
そして一番優しくしてくれるの

コロナが猛威じゃない?
だから私は玄関で全身防御服装備して
リビングに入るの

ドアが開いてから、しばらくしても入ってこないから
見に来てくれるの

あーやっぱり来てくれてたんですね
音がしても入ってこないから

それがね
これを着るのに時間がかかるんですよ

あーそうですね
こんな服を着るほどまでに
私はそんなに悪いんですか?
手間をおかけしてる様ですみませんね

あら嫌だ
違うのですよ
コロナという疫病が流行ってて
ほぅら?こちらに外出時にはつけて下さいとマスクをご用意してるでしょう?
外に出るのは気をつけて下さいね

あーこれは
その為なんですね
知りませんでした

〇〇さんはいつも眼鏡をかけてますから
マスクをつければかなり感染を防げますから大丈夫ですよ
外から帰ったら手を洗いましょうね

そうなんですね
気をつけないといけませんねぇ
そんな事ですか

認知症の方は
何度コロナの話をしても記憶に留められない方もおりますし
そればかりか
防護服を着ると混乱してしまう方もいます

まるでそれは
慣れ親しんだ私達に警戒心も生まれたりするのではないでしょうか

突然、息子はいつ帰ったのですか?
黙って帰った様ですね
とずっと県外にいる息子さんが
居たような話をしたり
混乱してるのを感じました

ならばと
本日のスケジュールのラスト支援でしたので
いつもは30分の支援を2時間かけてゆっくりそばに居て安定してもらおうと、ゆっくりと行動しました

体調確認にバイタルサインを測り
夕飯の準備をして
お茶を出して
寝るまでのおやつも用意して
デイサービスのカバン内を整備して
夕飯を食べる様子を黙ってテレビを観ているフリをして
たまに目が合うと言葉をかけずに微笑んでおりました

そしたら
そっと席を立ち
湯呑みをもう一つ持って来て
お茶を入れてくれたのです

彼の支援は、かれこれもう
何年か覚えていませんが
お茶を淹れてくれるのは
初めてだった気がします

全身ビニールに包まれた私に
慰安の茶を淹れてくれる行動に
本当に胸がキュンとなり
手をさすりながら
有難う御座いますと返しました

貴女はもう、あと何軒回るのですか?

もう終わりですよ

貴女は何人の担当さんがおるのですが?

私の担当は〇〇さんだけなんですよ
専属ですよ
毎日来てますよ

全て嘘も方便です

そうですか!
それは有難いですなぁ
そうですか
毎日来てくれてるんですね
それは助かります
なんせ何も覚えてなくて困ったものです

いいえ
何も困りませんよ
全て上手くやれてますよ
大丈夫ですよ

私はこの時に感じたのです
コロナ騒動の中ですが
私達にはこの方のように
いつも優しくしてくれて待っていてくれる方々と会えなくなる事が
とても悲しいのです

思えば年々、足が弱り
腰も曲がって来たなぁと
今夜はつくづく感じました

長く支援してくれている
ヘルパーさん達も凄く良くしてくれてるのがわかります
キッチンも食事の手筈も
それはそれは完璧です

あんなにデイサービスに行きたがらなかった彼が
毎週きちんと5日間行ってくれるようになっていて
人は本当に変化してゆくものだなと
2時間の中でいろんなことが走馬灯のように思い出されました

重度の認知症の彼の在宅支援は
かなり手厚い介護看護体制が組めた
事例だと思いました

ここまで来れたのは
介護さん達と
看護さん達との
見事なあの手この手の作戦と
遠方のご家族さん達のとことん本人の意向を尊重しながらも
より良いケアを追求してくれた行動力の結果だと思っています

それでも限界はどこまでかを常に考えてハラハラしながら歩いて来た数年間でした

ケアマネさんも何人変わったかな?
それでも諦めなかった在宅サポートは見事なタッグで切り抜いて来ました

もし、この方が在宅が無理だと決定して
身を置く場所が変わると
私達はとても寂しくなるでしょうね
365日を何年間も続けて来た支援の中で

認知症だからこそ
純粋な優しさを感じて来れた日々の
残すものが襲ってくるに違いないと思えております

出逢いもあり別れもあるとは思い知った人生の中でありますが
訪問看護師とは何と切ない場面も多いものでしょうか

行き着く所
側にいる時に
思いっきり後悔しないように
優しさを交わせる事が
意味を残すと思うようになりました

血圧が高くてね
高圧剤が昨日から増量したのですが
コロッケにソースをかけては忘れて
またかけて一口食べて
またソースをかけてないと思ってまたかけて一口食べる
その行動を言葉で制止するのも
愛おしすぎて

手でソースを抑えて
顔を横に振り
もうかけてありますよ
と何度も繰り返して

ゲームのように楽しく感じる様に
私達を教育してくれたのも
この方の存在の意味に思えております

一人一人の支援を通して
私達はどんな方にも
心から可愛いなと思える様に教育させてもらえてるのだと思うばかりです

で、貴女はこれからまだ何軒回るのですか?

〇〇さんの所で最後ですよ
いいえ
〇〇さんの所しか私は来ないのです
毎日毎日〇〇さんの所にだけ来てるんですよ

そうですか
それは有難いですなぁ
大切にしなきゃバチが当たりますね

もう大切にしてもらえてますよ
いつも有難う御座います
感謝してるんですよ

そうですか
私は貴女に失礼なことをしていませんか?

〇〇さんはいつも紳士で
いつも優しくて
いつも朗らかで
大好きですよ

それなら良かった
安心しました

それより
長生きしてもらいたいので
ソースはもう冷蔵庫に、しまっておきますね
血圧が上がりますからね

高いですか?

心配するほどではないですよ
大丈夫ですよ

ええ、貴女が毎日薬を飲ませてくれてるなら安心ですね

2時間の間に
ゆったりとした表情に戻り

貴女の担当は何人いるのですか?

〇〇さんだけですよ
毎日〇〇さんだけに来てますよ

そうですか
それは有難い話ですね

防護服を玄関で脱ぎながら
聞きました
こんな格好をしないといけないのです何ででしょうねぇ

それは気を流行病に気をつけないといけないからじゃないですか?

やった!と胸を躍らせながら帰りました
また明日も忘れてるかも知れないけど
何度でも繰り返し話せば
一瞬でも覚えててくれる実感が湧く

無駄ではない看護の時の流れに
人は常に変化し
影響を与え合う悦びをくれる

時の流れは
出会いと別れの両方をくれる
それでも変化を遂げながら
落胆だけは与えないでいてくれる

寂しさとて
その中に残す思い出が
優しい気持ちを呼び起こす

あの人さんに
その人さんに
思い出を貰いながら
私の生は強くなってゆく

強くなって厚くなって
内側にある燃ゆるばかりの思い出が
ある時、器からこぼれ落ちたら
どんな人もこんな風になってしまうのだろうと思ってるんだけど

その器は人によって
大き過ぎたり
小さ過ぎたり
寸法が違うのかしら

いろんな看護師さんや
いろんな介護士さんに
出逢うと
この人の器はどのくらいの大きさなのだろうか
私はこの人が器から燃ゆる思いが零れ落ちるのを見る事ができるのかしらと眺めながら

こぼれ落ちるその瞬間を見たくて
足を踏み入れたこの仕事から
足を引っ込める事が出来ない気がしています

このナースは器からこぼれ落ちた人だなと感じた時
私はこの仕事を続けて来て良かったと安堵する

あと何人出遭えるのだろうか

器はその人が練って練って
ろくろを回す様に
形作って焼きつけた器だから
その人にしかわからない大きさなのだろうね

私は何年かけてろくろを回したのだろうか
何年かけて焼いたのだろうか

思えば私が土を練ろうと決めたのは
23歳の大分医大で働いてる時に
94歳の担当患者さんに点滴をしに
病室に行った時に
点滴セットを見て
カラカラの口が吐いた言葉

枯れ木に水を差さんで下さい

あの瞬間だった気がします
23歳の私はステーションに走り戻り
若い主治医に駆け寄り
泣きながら嘆願した

あの方に、まだこの治療をする必要があるのでしょうか?
先生?本当にこの点滴は必要ですか?
やめられないですか?
泣きながら聞く若いナースに
先生は聴いてくれた
何故、そう思うの?

枯れ木に水を差さんで下さい
って言ったんです
望んでないんです

そうか
有難う
今日のはそこに置いておいてくれて良いよ
僕がするから

次の日から点滴は、しなくなっていた

治療が止まった事を知り
その医師に詰め寄り
先生?やめたんですか?

君の勇気を僕の勇気にしてみたよ
医局長に話したら中止になったよ

ごめんなさい
私は出しゃばりました

良いんだ
僕も同じ気持ちだったから
今日は家族と話す予定だから
家に帰るか聞いてみます

94歳で抗がん剤治療をしていた方の
忘れ難きエピソードとして鮮明です
当時はまだ治療が優先的で
病院とは入院したら治療が先決だった様に思えます

あの頃は
私が何をするのか
私が何を言うのか
で何かが変わることを恐れてた気がする

ろくろを回しながら
器の厚みや、デザインや、色や、大きさを土の質も考えながら作り出す過程が
経験なのだろうか

感性や資質という部分もこだわりながら
自分を磨いていく精神も経験に加わらないと良い器は出来ず
零れ落ちる中身だけにこだわっても
器の美しさは見えず

どれもかしこも
組み合わさって
1人の看護師の生き甲斐となるのかも知れないな

だとしたら
育てようなんて無粋な事で
自分で育ちなさいと言うのが
一番しっくりくる気がするのです

自分で育つとは
自分の生活の中にある場面場面に
自分を磨く意識があるかどうかだなと思うのです

磨こうとしないと磨かれても磨かれず
磨こうとしてれば磨かれなくとも輝くのだろう

そんな位に
お好きな様に生きなさい
お好み具合に磨きなさい
結果が美しい集大成になるかどうかが
自分の人生なのでしょう

私の傍にいる人の
訴えかけてくる程の
美しい価値ある器から零れ落ちる様が存在するならば

私はまだまだろくろを回し
もっともっとを目指したいと思ってしまうのだろう

私が急須に淹れたお茶を
お茶を淹れましたから
貴女も飲んで下さいな
と優しい手つきで差し出した

今日飲んだどんな飲み物より
一番美味しい飲み物でした
1日の汗だくの身体に染み渡り
枯れ木に水を注してくれました

水を差すのか注すのか
その違いを感じられるには
ろくろを回し続けないと
わからんやろうなぁ

なぁ?わからんやろうなぁ

うん、そう思う気もするなぁ
私もそうだった気がするわぁ

そうよなぁ
私もそんな気がするわぁ

言い合いながら
ぼんやりと遠くを見つめる薄っすら切ない訪問看護師が2人
外食先の腐ったオニオンスープに当たり
夜中の1時に整腸剤を飲んだ
笑笑

コロナに罹らなくても
コロナのおかげで
やっと来店したお客様になってしまい
腐ったオニオンスープを食べた
笑笑

食べながら2人で言った
確かに言ったな

レイクの耳の匂いに似てない?

うん!この匂いやばいわ

一口でやめたけど
大当たりしたわ
私達の運は最強ね!

だから訪問看護を続けて来れたのよ
って言ったら治ったわ

明日も汗だくで最高ね
良い思い出が増えるはずよ

うん、寝るわ

うん、寝ましょう

起こしてよ
起きさえすれば
どこまでもいつまでも動けるから

そこがいつも大事なポイント
朝日が昇れば陽は射す
光は人生を照らす

水を注ぎあって育ち合うのが
楽しいのです

 

かがやき訪問看護ステーション
〒874-0042 大分県別府市鉄輪東3組-5
TEL 0977-85-8401 FAX 0977-85-8402
完全365日24時間緊急連絡及び対応あり
緊急連絡先【看護】TEL 070-5481-8405

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