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ミンクのコートの秘話




 

山海は、あっちゃんを連れて行きたかった場所

あっちゃんを連れて行けないままで終わった場所

あっちゃんは私と食事を食べに行くのが一番の楽しみだといつも言ってた
96歳で旅立って逝った

それから山海に行くとあっちゃんを思い出すから偲びながら食べるの
一緒に連れて行ってる気分になる様に
このミンクの毛皮を着たのよ

このミンクの毛皮はね
思い出のコートなの

私が大学の講話をしに行くと話したら
私も行くわと言った
大学生達の一番後ろの席に
94歳だったあっちゃんは座って
私の講話を嬉しそうに聴いてくれた

その時に、
貴女の講話を聴けるなんて
娘の参観日に行く気分だから
とっておきの服を着て行かにゃバチが当たるって言ってね

玄関で待ってたら
このとっておきのコートは
まだ2回しか着てないのよって
笑いながら
このミンクのコートを着て出て来たの

そして、
私が死んだら貴女にあげるからね!

私は大笑いしながら
私には似合わないわよ
あっちゃんみたいに貫禄がないわ
あはははは
って笑い飛ばして
要らないわよって言ったの

また!そんなお馬鹿さんな事を言って!
人がねあげるって言ったら
嬉しいって貰っとくのよ
プレゼントには福が付いてくるものよ
って叱られた思い出

それから2年後
あっちゃんは旅立って逝った

お葬式の後
驚く事に
甥御さんが
このミンクのコートを肩にハンガーごとかるって事務所に来てくれて

これはアンタにあげないといけない気がしてね
おばちゃんの大事に着てたものだから
アンタに貰ってもらおうと思ってね
って

なんとこのミンクのコートを差し出したの

まるで彼は
あの日の会話を知ってるのかと思ったわ
驚いて息を飲んだわ

あーあの日のミンク!
あーあっちゃんは彼に感じさせて動かして来たのだわって涙が出た

陰干し終わって
鏡の前で初めて羽織った時
まるで、あの頃の様に
あっちゃんに包み込まれてる気分になった

あーそうなのね
あっちゃんは私に本当に着て欲しいのね
わかったわ
いつかいつかね
似合う様に着こなして見せるわ
いつかきっとって思った

そしてポケットに手を入れたら
ティッシュが一枚入ってた
そのティッシュがとても大事に思えたの

あっちゃんが
いつもバッグにもポケットにも
ティッシュを一枚忍ばせてたから

最後まで女性らしかった彼女の
たしなみが一枚のティッシュで蘇ったの

行くわよ!
早く、用意できた?
ご飯を食べに連れて行こうとした時や
デパートに買い物に連れて行く時に

ちょっと待って!
ティッシュを一枚持っとかんと
何があるか分からないから

そう言ってた場面が蘇った一枚のティッシュ
このティッシュは恐らく
私の講話を聴きに来てくれた時に
私に失礼がない様にとポケットに入れた一枚なのね

このティッシュは
そのままいつもミンクのコートのポケットに入れてる私
あっちゃんがミンクと一緒にくれたティッシュね

ん?まだ何か入ってるわ
買った時の値札だった

1400000円

どう?
着こなせてますか?
ウフフ
あっちゃんの愛をまとうだけで
私には着こなせてなくても幸せな気分

あの日あっちゃんは言った
貴女みたいな人が居てくれる事は
私にとって
この毛皮よりも価値ある事よ
こんな婆ちゃんを誰がご飯に連れて行ってくれるものですか
この歳になって貴女と出逢えて
私は幸せ者ね
感謝せんとバチが当たるわ

あっちゃんが逝って4年目の冬が来た今、伝えたい言葉があるのよ

誰がこんな超高級なミンクのコートをプレゼントしてくれるものですか
この歳になって貴女と出逢えて私は幸せ者だったと思えてるのよ
感謝せんとバチが当たるわ

こんな風な気持ちで
ミンクのコートを着て食事に行ける事は
あっちゃんと出逢ってなかったら起こらない事象ね

寒い時は寒くなくて
暖かい部屋の中でも暑くなくて
私を丁度に包み込む

昨夜、書き物をしてて
裏紙のメモ用紙を探して手に取ったら
表に、あっちゃんの名前が書かれてたのよ
信じられるかしら?

昔の裏紙が出て来たのよ
明日私も連れて行ってよって現れたに違いないわね
忘れずにミンクのコートを着てよ
思い出してよ
って、そのメモ用紙は現れた

シェフは、たくさん食べられない私のペースをわかってて
魚料理を一つ減らして
牛ステーキを多めに出してくれた

そう、まるで
あっちゃんがステーキを大好きだったのを知ってるかの様にね

ステーキ食べに行こうよ
この合言葉がわかる人は何人いるかしら?

大正、昭和生まれのご高齢者さんにとって
豪勢な食べ物はステーキなのよ
ステーキ食べたら元気になれるのよ
生きる意欲が湧くの
ステーキ食べられたら生きて行けるって思えるのよ

ステーキ残さず
あっちゃんと山海で食べました

山海に行くと
あっという間に5時間が経つの
食べるのが速い私が
一回の食事に5時間もかかるなんて不思議な空間になるの

それさえも
ゆっくり良く噛んで
お上品に食べるあっちゃんが
2人同行してるからだわって思える不思議なひとときなのよ

シェフも側に来てくれて
椅子に座って一緒にコーヒーを飲んでくれて熱く人生について語り合った
たくさんたくさん語り合ったの

料理人として巨匠だと思う方です

携帯箸をシェフがプレゼントして下さいました
この箸にも込められた深い想いが偲ばれます

かがやき訪問看護ステーション
〒874-0042 大分県別府市鉄輪東3組-5
TEL 0977-85-8401 FAX 0977-85-8402
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