お通夜の帰り☆3

 

そして、90歳からの数年間は
心臓と肺を労わりながらの慎重な看護でした
異常の早期発見を何度も何度も
ナースさん達に頼みながら

年に一回は肺雑音が出て見つけ
入院してもらい治療が済んだら
退院のペースでした

今回もそんな入院でしたが
８月３１日の退院を前に急変して
旅立ちました

その電話を受けて
胸はドキドキして
そうですかと返すのがやっとでした
すぐ会いに行きたくなりました

寝姿はとても穏やかで色白も引き立ち美しく
何度となく洗ってきた白髪を撫でて見送りました

決めたのね
帰るのが不安だった？
限界を感じてたものね

そう決めたのだと思いました
信念がある人だったから
旅立ちも意思で決めたのね
と白髪を撫でました

あーえりちゃんが来たんかえ？

そうよ来たのよ
家に帰ろうかねぇ

何だか私の背中が痛いけど、背中が痛いの？
寝てばかりで痛かったのね
退院したら毎日私が行くからって話してたの聞いてたのね？
だからって気遣って旅立つ必要はなかったのに
そんな人だからねぇ

無念はないよ
よー生きたやろ？

うん！よー生きた
最後まで男らしくてカッコよく生きてたよ
こんなに思いやり溢れた紳士は滅多といないわ
奥様が迎えに来てくれたかな？
たくさんたくさん
1人になって寂しかった話をするんだよ
たくさん癒してもらってね

思い出すのは一緒にお寿司を食べに行った時
イカを喉に詰まらせて、お寿司屋さんで咄嗟に私が口の中に手を突っ込んでイカを引っ張り出した場面

普通は窒息しそうになったら
焦るのに
あーもうダメかと思ったら
えりちゃんは凄いなぁ
脇目も振らずに手を突っ込んでくれてイカを引っ張り出したわ
と大笑いしてた

もう！90歳超えたら噛まんと死ぬで！
やめてよ！死んだら怒るけん！

大笑いしながら
死んだら怒ってもつまらんわ
しかも死んだら仏様になるから
仏様を怒ったらバチが当たるで
と笑ってたね

本当に仏様になったから
もう何も言わないね
残念がる事もしないね
これで良かったんだと手を合わせるね

私の〇〇ちゃんが旅立ちました

訪問看護管理者として
たった1人の利用者さんの旅立ちでと皆は思うかもしれないが

たった1人の利用者さんが人生を変えてくれる事もあるのが訪問看護なんです
Sさんが楽しみにしてくれていた
新事務所

空から眺めてるかな？
藤原ナースさんがいつも
事務所の工事風景や
私や娘の動画を見せてくれたりしていました

名目として無償の自費支援の頃、娘は小学校１年生で
寂しがる時は連れて行きました
小さかった娘が大きくなる様子も喜んでくれました

娘はSさんの入浴介助をしようとすると
ママ！私が〇〇ちゃんと一緒に入って背中を擦ってあげるから
掃除機かけてて良いよ
と言って

90歳の〇〇ちゃんと歌を歌いながらお風呂に浸かってくれました
目を細めて彼はこう言いました

はるちゃんは毎日お風呂に入るけど
わしは週に2回だけだから汚いから
入るのはやめなさい

そんな事気にせんで良い
はるみが〇〇ちゃんと入りたいの
大好き！って会話をしていました

90歳の紳士たる関わりは小学生の娘に沢山の考え方を与えてくれました

良いかい？
はるちゃんのお母さんは
世界一働き者や
仕事ばっかりで寂しいときもあるだろうけどな
お母さんは、はるちゃんを守るために働いてくれてるんだよ
大切にしなさいよ
手伝ってあげてな

私の子供に、そんな言葉を投げかけてくれる人はSさんしか居なかったんです

私ができる事
Sさんが私にできる事
お互いにそんな思いやりで過ごした6年間でした

これからは生きてた時より
もっと身近に居てくれるのだと信じています

93歳で旅立った私のサンタクロース
これからは天からいつでも来てくれるね

有難う
ずっといつも変わらず励ましてくれてエールをくれて有難うございました

代わりは居ない
そう思わせてくれる人はサンタクロースですね

燃えるような空
燃えるようなSさんの人生
燃えるような励まし受けた数年
燃えるように人生かけて訪問看護をしようと決めた若い看護師達
燃えるような空を見上げて
燃える気持ちをもっともっと燃やして燃える訪問看護師さん達の補佐役に燃えます！

空が燃えてた
〇〇ちゃんの生きた人生の様に燃えてた