８月２１日の看とり☆3

 

事務所に着くと
みんながポータブルトイレと
吸引器の消毒に入ったので

もういいから、今夜はそんな事はしなくていい
早く帰って寝なさい

眠れません

わかるわ
これが引き潮の時刻だと
もう眠れなくて朝が来るけど
まだ時間は今夜はあるから

片付けは明日に私がするから置いといて良いから
と言いながら手を動かしていると

今度は板倉ナースが
お孫さんが、今夜は泊まるって言ってて
着替えとシャワーを浴びに帰った時に呼吸が止まり
戻って来て泣き崩れたんです
帰らなきゃ良かったって泣き崩れたんです
と大粒の涙をポロポロと流し始めました

そんな時はね、こう言って欲しいの
もう充分に通じてて
伝えたい事がない人には
そんな風なんです
良く死に目に会えなかったと残念がる人がいるけど
そんな事じゃないのだと言ってあげて欲しいの

ずっと側で何ヶ月も看て来た家族が
遠方の子供とかが駆けつけたから
ちょっと買い物行ってくるねって出た時に旅立ったりもあるんです
そんな風に、もう充分に関わって伝わってる方がその瞬間に居合わせない事にもそんな意味があるんですって話してあげてね

祖父の生きる想いをしっかりと受け継いでいるのだと声をかけてあげて欲しいの

最後の姿を見せたくない方もいたりするの
それがストーリーなのよ
私達はたくさんの方々の旅立ちを見て来たから言えるのです
これで良かったのですと伝えてあげてね

そうなんですね
わかりました
と涙を拭いてくれました

私は本当にそう思えています
その瞬間に居合わせるとか居合わせないとかが
看とれた看とれなかったという答えではなく
しっかりとその旅立ちの意味と生きて来た価値という生き様を
感じとれているかどうかの方が大事なのだと思えています

孫が祖父の最後に側にいたいと思い
泊まろうとする行動こそが
どんなに凄い事なのか私はわかるのです

可愛がって支えて来た
伝え続けて来た孫への愛情は
素晴らしいものだったのだとわかるのです

板倉ナースさんに言いました
命のバトンは
生きてる事なのではなく
生きて何を子孫に伝え残すかなんだよ
それをしっかりとしていたSさんの
生き様が素晴らしいとわかるよね

孤独な死も多い中で
孫にも子供にも
奥さんにも囲まれて
果たした素晴らしい生き方を感じるよね

はい！
そう思います！

貴女も良い生き方を出来るように
学ばせてもらえたね

はい！

生から学び死から学ぶ
そして何を発して訪問看護をして行くのか
彼女達の経験を積む勇ましい姿は
私を本当に安心させてくれます

休みなのに飛び込んで来てくれた
丸尾ナースも
2年目のナースさん達が
何を感じて訪問看護をしていくのか
指導的立場で微笑んで訪問看護をしていくのが浮かびました

松井ナースさんは
私はまだまだですと
胸にまた一つ
課題を持ってる風でしたので

何が足りなかった？

ベッドマットをもっと早くから
エアーマットにしてあげれば良かった
介護保険申請がまだでしたから・・・

そうね
そんな時は次は
当社で先に立て替えてマットを借りれば良いね
返金はいつでも良いからね

デス・カンファレンスはとても重要なのです
その一瞬一瞬に
出来ることを最善を尽くす

お金を気にするより
少しでも楽にする事が大事だからねと話した

まだターミナルの方は複数名いらっしゃいます
どの方にもその人らしい旅立ちを
運んで行けるようになる
という責任感は

足りないところを探し
これからの未来に繋げる責任感

昔の人は凄いですね
日本人は凄いですね

切腹するより
命より
大事なものが約束を果たすという
責任感だと伝えるために
切腹があったのだろう

看護に欠かせないのは
責任感という職業意識

常に内省と発展を繰り返す
振り返りがプロを作っていく
人を育てるという職業意識

２１日
この日に旅立つ方が居る間は
私は訪問看護師をしなさいと言われてる気分になるのです

立ち上げた日から
２１日に旅立つ方が多いのは
天からそう言われてる気がしております